GUCCIな週末
「地方から来た人って、あからさまにブランドロゴが見えるモノ持つよね〜」
18歳。上京したての私は、その東京出身の同級生の言葉に、恐れ慄いた。
巻き髪(名古屋巻き)、ヒール、わかりやすいブランドバッグか小物。いけてる大学生の鉄則だと思っていた三原則は、ここでは田舎者の証なのだろうか。
東京出身の友人たちは、たしかにリラクシングな格好をしているし、ブランドものも一見そうとは気づかないくらいさりげない。
今思い返すと、私に言われたわけではなかったし、その言葉をはなった彼女は特段おしゃれだったわけではない気がする。でも、それから15年、私のなかにその言葉はすっかり根をはって、ハイブランドには興味のない大人になった。
だから、GUCCIの店頭で、バッグを試すなんて。私にとっては異例の行動だった。しかも、表に「GUCCI」と書いてあるバッグなんて。
銀座三越1階バッグ売り場。鮮やかなカラーリングのバッグに釘付けになってしまった。
ロイヤルブルーにイエローのバンド、イエローにライトブルーのバンド、ライトブルーにオレンジのバンド。

〔グッチ ダイアナ〕ミニ トートバッグ ロイヤルブルー。
「いかがですか? ぜひお試しになりませんか?」
「あ、いえ」
一度通り過ぎたけど、つい戻ってきてしまった。色が素敵すぎる。
「ぜひお試しに」
「あ、では、いいでしょうか」
そもそも普段は、ブランドバッグだらけの銀座三越の1階には行かない。きっかけは、『一年3セットの服で生きる「制服化」という最高の方法』という本を読んだことだった。年末の引っ越しを機に、本当に自分が好きなものだけに、服を絞りたいと思って手にとった。
「なりたい」「好き」「似合う」「トレンド」「TPO」「求める心地よさ」を分けて言語化して、自分のスタイルを確立する。
著者のあきやあさみさんはこれを徹底していて、大好きな自分らしい服をワンシーズン毎日(!)着ているらしい(3シーズンで「1年3セット」になる)。
その中でもバッグは、「自己紹介」「こんなふうに見て欲しい私の分身」。あきやさんのnoteでもアイコン的になっているのが、彼女の愛用するGUCCIのバッグだった。モノグラムに、鬼才と言われるクリエイティブ・デザイナー、アレッサンドロ・ミケーレの愛犬がどーんとはいった個性的なデザインだ。
これがとてもかわいい。冒頭の言葉以来、特に敬遠していたモノグラムが、とてもかっこよく見えた。
ミケーレで検索してみると、意識していなかったけど、Pinterestでピンしていた好きな画像に、ミケーレ時代以降のグッチのコレクションがあった。そういえば、去年Instagramが一時、ミケーレの展示で盛り上がっていたような。

ピンしていた画像。GUCCIの2017年のコレクションのものだった。
俄然GUCCIに関心を持った私は翌日、ちょうど用事のあった銀座で、久しぶりに三越にはいってみたのだった。
私が心奪われたのは、ダイアナ妃が愛用していたバンブーハンドル付きトートバッグを、リバイバルしたものらしい。肩にかけてみると、色に形にすべてのバランスが美しい。
目をあげると、黒レザーのシンプルなショルダーバッグがあって、それも試させてもらった。同じくらいのサイズの黒にゴールドの金具のバッグは持っているけれど、レザーも金具も光沢が全然違う。これが「格」か…。

〔グッチ ホースビット 1955〕ミニバッグ。これもヴィンテージバッグの再解釈。
ロイヤルブルーのほうを買ってこれからは服をシンプルにするのもいいし、黒レザーを買ってカラフルなワンピースと合わせるのもいいかもしれない。夢が広がる。
ただ値段は、普段見るバッグと一桁違う(一桁減らしても高いし、よく考えたらもっぱら貰い物のバッグばかり使っていた)。
「2つともは、一度に買えないので、考えてまた来ますね」
と言って帰った。本当は一つだって、別に買う予算はとっていなかったのだけれど。
帰り道。70代まで使ったら、年1万円のサブスクになってNetflixより安いのでは…と、考えた。
帰宅後、アマゾンプライムで『ハウス・オブ・グッチ』を鑑賞。その後、勢いにのって、クローゼットを見直す。半ばGUCCIのバッグを買う理由欲しさに(笑)。
「なりたい」「好き」「似合う」「トレンド」「TPO」「求める心地よさ」をノートに書き出してから、服を見直す。夏に一度断捨離をしたつもりだったけれど、あらためて見ると、この6要素のうち2つくらいは満たすからなぁと残っていたものたちがいて、3セットとまではいかないけれど、なかなか潔く減らせた。
バッグを見る。貰い物のバッグは、この際、手放そう。あ、でも、これは残すよね。
昨年亡くなった祖母のクラッチバッグだ。遺品から欲しいものを持っていっていいよと言われて、かっこいい!と思って、もらったものだ。
クラッチバッグを使うタイミングはなかなかないけど、うまく使いたいなぁと思って、あらためて眺めると、中心には昨日今日で見慣れたマークがあった。

あ、これGUCCIなのか!!
1年越しに気づき、なんとも不思議で、あらためてプレゼントをもらったような嬉しい気持ちになった。祖母はどうやって使っていたのだろう。
よく見ると、ショルダーの紐を通すところがあったので、実家にないか探してみよう。
【編集後記】
『ハウス・オブ・グッチ』は、映画としては面白かったのですが、シャネルの映画のように、ブランドへの愛が高まるものではありませんでした(どろどろなグッチ家没落の話なので)。
創業者のグッチオ・グッチや、現デザイナーのミケーレの映画が公開されていたら、バッグを買わずにいられなくなっていたかも!
ただ家にあったリアルオールドGUCCIとともに過ごすのも楽しみにしつつも、店頭のバッグたちを忘れられない自分もまだいます(笑)。

ライトブルーにオレンジも、かわいい。
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