うるさく雑多で、怒られないか/静かで整然としていて、怒られるか

[日曜の窓辺からVol.53]ガーナ、東京、ホーチミンの音と、子どもへの寛容さについて。
やすむ 2024.01.30
誰でも

ガーナの市場はね、みんな大音量の音楽かけてる。

食べ物も、動物も、楽器もある。みんな踊ったり、がやがやしてる。

いろんな部族、いろんな人がいるからね。

みんな言うこときかないから、うまくいかないこともたくさんある。

日本は日本人ばかりだし、狭いところにたくさん人がいるから、政府がコントロールしてるでしょ。

すごく静かだよね。

日本の人は、あまりカラフルなのは好きじゃないよね。

まぁ、でも、高円寺には好きな人、けっこういるからさ。ここで売ってるの。

———

授乳するのに前開きの服をと、クローゼットを眺める。久しく着ていない、赤と黄色のシャツがあった。

それで思い出したのが、ガーナから来たという男性から、このシャツを買ったときのことだった。

高円寺の商店街の一角で、その男性は、アフリカらしい布で仕立てた服を売っていた。

ベトナムへの引越しを控えて、服を減らしているときだったのに、ついガーナの話を興味深く聞いているうちに、買ってしまったのだ。

アフリカ布の服は皺ができやすく、アイロンを避けたい不精者としては、つい着る頻度が下がってしまう……

アフリカ布の服は皺ができやすく、アイロンを避けたい不精者としては、つい着る頻度が下がってしまう……

みんな自由勝手にやって、そのぶん困ることも多いガーナ。

きれいに統制されていて、なんだか息苦しくもある日本。

そういえば去年、ホーチミンから一時帰国したときにも、東京の静けさに、驚いた。

人は多いのに、整然としていて静か。暮らしているときは雑多だと思っていた、中央線界隈でさえ、そう感じた。

ホーチミンは、ガーナの市場ほど、楽器や踊り、さまざまな部族がいるわけではない。

ただ夜になっても、クラクションとカラオケの音はやまないし、人は大きな声でよくしゃべる。

皆YouTubeやTikTokを、イヤホンなしで見る。

だからなのか。特定の人やモノをうるさいと思うことが、日本に比べて少ない。

こちらで子育てをしている人と話すと、街で子どもが迷惑がられないのが良い、という人が多い。

よく話題にあがる、電車内の赤ちゃんの泣き声も、日本は静かすぎて目立ってしまうのかもしれない。 

ホーチミンでは、子どもが騒ぐ声は、街の喧騒に紛れている。

私個人の感覚としても、日本にいるときのほうが、子どもの泣き声や騒ぎ声を、認識していた。

そもそもこの街で、子どもが迷惑、という雰囲気を感じたことがない。

子どもを見ると、かわいいかわいいと、積極的にかまう大人が多い。

娘もすでに、マンションのスタッフの人に、抱っこされて、ベトナム語でいろいろと話しかけられている。

けっこう急に抱っこされるので、日本でされたらぎょっとする気もする。

日本のSNSでは、断りなく子どもを触られることへの不安や憤りの声も見るし、その感覚もわかる。

よかったね〜あやしてくれて楽だな〜と思うのは、ベトナムの郷に従っているのかもしれない(まだ会っているのが、マンションの人だからというのも、あるかも)。

まだ行っていないが聞くところによると、ローカルな食堂でも、なかなか高級なレストランであっても、店員さんが嬉しそうに抱っこして「お母さん、ごはん食べなよ」と言ってくれるらしい。

遊具のあるカフェも多い。

遊具がなくても、わりと子どもが自由に遊んでいる。

夕食後の時間あたりに、チェーンのコーヒー店に行ったら、縦横無尽にかけまわる幼児や、床を這う赤ちゃんだらけのキッズカフェのような状態で、驚いたこともある。

カオスな騒がしい店内。

パソコン作業や電話をする大人たちは、慣れっこなのか、特にそれを気にする様子はない。

私はここで作業は無理かなと思っていると、よちよち歩きの子が、傍らに置いていた私の傘を興味深そうに触っては離れることを繰り返しはじめた。

かわいいなと笑って見ていたら、その先でお母さんらしき人が笑顔で子どもを見ている。

いい距離感だなと思った。まだ出産前のことだ。

今週から、少しずつ娘と外出してみようと思っているところ。

ベトナムで、日本で、これからなにを感じるだろうか。

———

ホーチミンは、旧正月を控え、すっかり年末ムードです。

街のカラオケも盛り上がっており、どこかのおじさんの音漏れどころではない、カラオケの音が子守唄になっています(笑)。

……と書いていて、東京も駅前の路上ミュージシャンは、夜も歌っていたなと思い出しました。

▼飲んだ帰りに見ると、ちょっと嬉しくなる、ナイスなネーミングのミュージシャン

▼夜遅くではないけど、駅前広場に年中タンクトップでいて、独自のバイブスをはなっていた人

(踊りと歌と酒があり、いろんな種類の人がいるという意味では、少しガーナ的か)

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