営業ドラゴン/遠い国のバルコニーで/推しのチグ様
2025年12月1日 営業ドラゴン
夫は営業マンである。
お客さんに丁寧な気遣いをする自分が、けっこう好きなようだ。
出張から帰ってきたばかりのこの日、へんな夢を見たのだという。
自分はドラゴンになっていて、でもいつも通りお客さんと商談をしている。
ドラゴン姿でも、やることは変わらない。取引する商品について議論し、丁寧に受け応える。
ミーティングが終わると、お客さんは急ぎで次のミーティングに向かわなくてはいけないのだという。席を立つと自然と言っていた。
「あ、では、私の背中にのってください」
タクシーに案内するような感覚なのか、ドラゴンなりの気遣いに、朝から笑ってしまった。
2025年12月2日 遠い国のバルコニーで
スイスに住む弟と、久しぶりに話した。
相変わらず、私とちがってよくしゃべる。
「会社の飲み会でさ、唯一のアジア人仲間のカザフスタン人と、バルコニーでしゃべってたんだけど。ふと、あれ俺なにしてるんだろうって思ったんだよね。なんかいろいろ昔の自分が予想してなかった人生の展開だよなぁ」
バルコニーを想像してみる。
スイスのバルコニーがどんなかんじがよくわからないので、ぼんやりとしたイメージだが、たしかに、一緒に実家に住んでいた頃の学ランを着たドメスティックな弟からは、遠いかんじがする。
そして、10年前、当時住んでいたトルコの家の近所の公園で、似たような感覚を持ったことも思い出す。
少し遠くで、高そうな毛並みのゴールデンレトリバーが何匹か走っている。その目線の先には、ゴールデンレトリバーと同じ髪の色の女性がいる。
見上げると、モスクの細い塔が空から突き出して見える。
寂しさとは違う、でも、あれ、なんでこんな遠くにいるんだっけという感覚。
人の感覚って、自分で普段思っている以上に細かいなと、こういうときにふと気づく。
2025年12月5日 推しのチグさま
タリーズで隣の席の女性二人組が、推しについて、とても楽しそうに話している。Xのタイムラインの言葉でそのまま、しゃべっているかんじ。
二人とも、円盤(映像作品DVDの意)の入手はもちろんマスト。DVDがあっても、同内容でブルーレイ版がでればさらに買う。
一人は、日本では発売されていない幻の映像を、ドイツ語でタイトル検索してなんとか入手したらしい。
「あ、英語じゃなくて、ドイツ語かぁー!」
ともう一人が膝を打つ。
推しのチグさま(?)は、ダンスも演技もする人で、ブルースリーでのパパ役が、最高なのだという。
何者なんだろう。
———
娘がかわいくておもしろい、あの仕事が終わらない、この仕事おもしろい、この豚肉おいしいね、寒い、意外と暖かい、娘が逃げてズボン履かないのですが……
人とのLINEや会話では、そんな話ばかりしているのに(から?)、書きたくなるのはこういう実利的でないことばかりだなと思います。
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